そのジビエ、本当に大丈夫ですか?無許可で処理された「闇肉」に注意

近年、ジビエの認知度が高まり、イノシシ肉やシカ肉を飲食店、イベント、インターネットなどで目にする機会が増えてきました。

一方で、保健所から食肉処理業の許可を受けていない場所で解体・精肉されたジビエ肉が流通している、いわゆる「闇肉」が横行しているとの声も聞かれます。

本記事では、保健所の許可を受けた食肉処理施設ではない場所で、食用として解体、脱骨、分割、細切、精肉されたジビエ肉を、便宜上「闇肉」と表現します。

ただし、「闇肉」は法律上の正式な用語ではありません。

また、本記事は特定の猟師や事業者を名指しするものではなく、消費者の安全と、正しく衛生管理を行っているジビエ関係者の信用を守るための注意喚起です。

イノシシやシカを食肉として処理するには許可が必要

イノシシやシカなどの野生鳥獣を、食用として解体・精肉する営業は、食品衛生法上の「食肉処理業」に該当します。

食品衛生法施行令第35条では、食用にする目的で野生鳥獣をと殺・解体する営業や、解体された肉や内臓を分割・細切する営業を「食肉処理業」と定めています。

そして食品衛生法第55条第1項では、食肉処理業を営もうとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければならないと定めています。

北九州市の場合は、保健所を設置する市であるため、北九州市長の営業許可が必要です。

つまり、自分で捕獲したイノシシやシカであっても、自宅、倉庫、山小屋、車庫など、食肉処理業の許可を受けていない場所で解体・精肉し、食肉として販売・流通させてよいわけではありません。

厚生労働省も、業として野生鳥獣肉の処理加工を行う場合は、基準に適合する食肉処理施設を設け、必要な営業許可を受け、衛生的に処理する必要があると明記しています。

無許可で解体・精肉した場合の罰則

食肉処理業の許可を受けずに、業としてイノシシやシカを解体・精肉した場合、食品衛生法第55条第1項に違反する可能性があります。

食品衛生法第82条では、無許可で営業した者に対して、次の罰則を定めています。

2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金

事情によっては、拘禁刑と罰金の両方が科される場合もあります。

これは単なるマナー違反や、保健所から注意を受けるだけの問題ではありません。

行為の内容によっては、刑事罰の対象となる可能性があります。

また、会社の従業員などが会社の業務として無許可営業を行った場合は、実際に作業をした本人だけでなく、法人にも罰金が科される可能性があります。

不衛生な肉を販売した場合は、さらに重い罰則も

無許可営業とは別に、その肉が腐敗していたり、病原微生物に汚染されていたり、人の健康を損なうおそれがある状態だった場合は、食品衛生法第6条に抵触する可能性があります。

食品衛生法第6条では、次のような食品の販売や、販売目的での加工・調理・保管などを禁止しています。

  • 腐敗または変敗した食品
  • 有毒・有害な物質を含む食品
  • 病原微生物に汚染された、またはその疑いがある食品
  • 不潔な状態などにより、人の健康を損なうおそれがある食品

食品衛生法第6条に違反した場合は、同法第81条により、

3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金

の対象となる可能性があります。

ただし、無許可施設で処理された肉が、すべて自動的に食品衛生法第6条違反になるわけではありません。

「無許可で食肉処理業を行ったこと」と、「肉そのものが有害・不衛生な状態だったこと」は、それぞれ別に判断されます。

売った人と買った人、どちらが罪になるのか

結論からいうと、売った人と買った人が、必ず同じ罪に問われるわけではありません。

立場や行為の内容によって、責任が異なります。

無許可で解体・精肉した人

食肉処理業の許可を受けず、業としてイノシシやシカを解体・精肉した人は、食品衛生法第55条違反の中心的な対象となります。

「自分が捕獲した個体だから」「知り合いに売るだけだから」「少量だから」という理由で、許可が不要になるわけではありません。

反復・継続して処理や販売を行っているか、利益や対価を得ているかなど、具体的な状況から「業」に該当するかが判断されます。

無許可処理肉を販売した人

自分では解体していなくても、無許可で処理された肉を仕入れ、販売、転売、調理、提供した場合は、販売者としての責任を問われる可能性があります。

特に、その肉が衛生上危険な状態だった場合は、食品衛生法第6条違反が問題になる可能性があります。

また、許可施設で処理した肉であるかのように偽って表示・販売した場合は、食品表示法など、別の法律に抵触する可能性もあります。

ただし、「無許可処理肉を販売した」という事実だけで、すべての販売者に同じ犯罪が自動的に成立するわけではありません。

処理への関与、肉の状態、仕入れ時の認識、販売方法、表示内容などにより、個別に判断されます。

飲食店や販売店が仕入れた場合

厚生労働省は、飲食店や販売店がジビエを調理・販売する場合、食肉処理業の営業許可を取得した施設で解体された肉を仕入れなければならないとしています。

飲食店や販売店が、肉を仕入れただけで直ちに食肉処理業の無許可営業になるとは限りません。

しかし、許可施設を通していないことを知りながら調理・販売した場合や、衛生上問題のある肉を消費者へ提供した場合は、保健所の指導や行政処分、食品衛生法上の責任を問われる可能性があります。

また、飲食店営業の許可だけで、イノシシやシカの皮剥ぎ、内臓摘出、枝肉の分割、脱骨などを自由に行えるわけではありません。

飲食店内で野生鳥獣を解体する場合は、飲食店営業とは別に、食肉処理業の許可が必要です。

一般消費者が購入した場合

一般消費者が、自宅で食べる目的で肉を購入しただけで、直ちに食品衛生法第55条の無許可営業違反になるわけではありません。

そのため、通常は「無許可処理肉を買った人も、売った人と同じ罪になる」という単純な話ではありません。

しかし、購入した肉をさらに販売したり、飲食店で提供したり、不特定多数の人に配ったりすれば、今度は販売・提供する側として責任を問われる可能性があります。

また、無許可処理肉は、捕獲場所、捕獲日時、処理日時、個体の異常、冷却温度、処理者、販売経路などを追跡できない可能性があります。

「知り合いの猟師だから大丈夫」「捕獲したばかりだから新鮮」という説明だけで、安全性を判断してはいけません。

無料で配れば問題ないのか

「販売していない」「無料で配っただけ」という理由で、必ず問題がなくなるわけではありません。

食品衛生法では、不特定または多数の人に対する無償での譲渡も、「販売」に含まれる場合があります。

そのため、イベント、試食会、地域行事、交流会などで無料提供する場合も注意が必要です。

一方、自分で捕獲した個体を、自分や家族だけで食べる自家消費は、通常、食肉処理業としての営業とは区別されます。

しかし、自家消費用として処理した肉を、反復・継続して第三者へ販売・提供すれば、食品衛生法上の「業」と判断される可能性があります。

判断に迷う場合は、必ず事前に管轄する保健所へ相談してください。

なぜジビエは許可施設で処理しなければならないのか

野生のイノシシやシカは、飼育環境や健康状態が管理されている家畜とは異なります。

厚生労働省は、野生鳥獣が次のような病原体や寄生虫を保有している可能性があると注意喚起しています。

  • E型肝炎ウイルス
  • 腸管出血性大腸菌
  • サルモネラ属菌
  • カンピロバクター
  • 旋毛虫などの寄生虫

見た目や臭いに異常がなくても、安全な肉とは限りません。

食肉処理業の許可施設では、処理室の構造、給排水、手洗い設備、器具の洗浄・消毒、冷蔵・冷凍設備、汚染防止、廃棄物処理などについて基準が設けられています。

さらに、捕獲された個体の状態確認、異常部分の排除、速やかな冷却、処理記録の作成など、衛生管理とトレーサビリティーの確保が求められます。

食肉処理業の許可は、単なる形式的な許可証ではありません。

消費者の命と健康を守り、万が一問題が発生した際に、どの個体を、いつ、どこで処理したのかを追跡するための重要な仕組みです。

ジビエを購入・仕入れするときに確認してほしいこと

ジビエ肉を購入する一般消費者や、仕入れを行う飲食店・販売店は、最低限、次の点を確認してください。

  • どこの食肉処理施設で処理された肉なのか
  • その施設は食肉処理業の許可を受けているのか
  • 処理施設名、所在地、販売者が明らかになっているか
  • 捕獲日や処理日などの記録が残されているか
  • 冷蔵・冷凍状態が適切に維持されているか
  • 加熱用であることが伝えられているか

「誰が捕獲したか」だけでなく、「どこの許可施設で、どのように処理されたか」を確認することが重要です。

福岡県内の獣肉処理加工施設一覧

福岡県内の獣肉処理加工施設は、福岡県公式ホームページで確認できます。

福岡県「ふくおかジビエの店」認定店・県内獣肉処理加工施設一覧
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/gibie-mise.html

厚生労働省「ジビエ(野生鳥獣の肉)の衛生管理」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/01_00021.html

北九州市「申請手続き(食品営業許可・届出)」
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/contents/924_11578.html

不審なジビエ肉を見つけた場合

北九州市内で、無許可と思われる場所で解体・精肉されたジビエ肉の販売、飲食店への持ち込み、イベントでの提供などを確認した場合は、当事者と直接トラブルになる前に、北九州市保健所へ相談してください。

門司区・小倉北区・小倉南区

北九州市保健所 東部生活衛生課
電話番号:093-522-8728

若松区・八幡東区・八幡西区・戸畑区

北九州市保健所 西部生活衛生課
電話番号:093-642-1818

ジビエ全体の信用を守るために

一部の無許可処理や不適切な流通によって食中毒事故が発生すれば、適切に衛生管理を行っている処理施設、猟師、販売店、飲食店まで、ジビエ全体の信用を失うことになります。

ジビエは、捕獲しただけで安全な食品になるわけではありません。

適切な許可施設で個体の状態を確認し、衛生的に解体・精肉し、温度と記録を管理することで、初めて消費者へ届けられる食材になります。

捕獲する人、処理する人、販売する人、調理する人、購入する人。

関係する全員がルールを守ることが、ジビエを一時的なブームで終わらせず、地域資源や新たな食文化として育てていくことにつながります。

食肉処理加工施設 北九州ジビエでは、保健所から食肉処理業の許可を受けた施設で、捕獲個体の確認、解体、精肉、温度管理、記録管理を行っています。

ジビエを購入・仕入れするときは、価格の安さや人間関係だけで判断せず、必ず「どこの食肉処理業許可施設で処理された肉なのか」を確認してください。

※本記事は2026年8月1日時点の法令および行政機関の公表情報をもとにした一般的な注意喚起です。

個別の事案における違法性、行政処分、刑事責任については、管轄保健所、警察、弁護士などが具体的な状況を踏まえて判断します。

 

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猟師のアジト

猟師のアジト

2025年10月1日に北九州市門司区で“食肉処理加工施設 北九州ジビエ”
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