
軽くて群れごと捕獲できる?新素材ネットを使ったイノシシ囲い罠の実証実験

関係機関と連携し、新素材のネットを使ったイノシシ用囲い罠の実証実験を行っています。
設置場所は、杉やヒノキ、孟宗竹が混在する林です。
周辺には家庭菜園があり、すぐ近くではイノシシ用の箱罠も運用しています。

今回は、従来の囲い罠が抱えていた課題を改善できるのか、実際の捕獲現場で検証していきます。
従来の囲い罠はネットの耐久性が課題
従来のネット式囲い罠には、イノシシの力に耐えられるのか、破損した部分やネットの継ぎ目から逃げられないかといった耐久性の課題がありました。
今回使用しているのは、従来品とは異なる非常に耐久性の高い新素材です。
害獣の侵入を防ぐ防護柵としても活用できるほどの強度があるとのことで、囲い罠としてどの程度の効果を発揮するのか期待しています。
構造は驚くほどシンプル
この囲い罠の構造は、非常にシンプルです。

立ち木を囲うようにネットを張り、ネット同士をタイラップで固定。さらにロープを使って立ち木に結び付けています。
大がかりな扉や複雑な作動装置があるわけではありません。
イノシシが鼻先を使って物を持ち上げたり、地面を掘ったりする習性を利用し、ネットの下から潜って中へ入らせる仕組みです。一度中へ入ると、外へ出ることが難しくなります。
現在は3か所を開けて馴化中
イノシシは非常に警戒心の強い動物です。
これまで何もなかった場所に、突然ネットで囲まれたものが現れれば、すぐに近づくとは限りません。
少しの変化を警戒し、何日も様子を見ることもあります。
そのため現在は、ネットの下部を3か所開放しています。

まずはイノシシに、
「ここは危険な場所ではない」
「中に入れば魅力的な餌が食べられる」
と認識させるためです。
イノシシが警戒せずに中へ入るようになった段階で開放部分を閉じ、鼻でネットを持ち上げて潜らなければ餌を食べられない状態をつくります。
この状態にも十分に慣れたことを確認してから、捕獲につなげる予定です。
なぜこの場所を選んだのか
当初は、孟宗竹林への設置を予定していました。
しかし、私たちにはその孟宗竹林で箱罠を設置・運用した実績がなく、イノシシがどのように動き、どの程度の捕獲効果を得られるのか分かりませんでした。
そこで今回は、すでに箱罠で捕獲実績があり、イノシシの出没を確認できている場所を選びました。
実績のある場所で運用することで、捕獲できなかった場合にも、その原因が「場所」なのか「囲い罠の構造や運用方法」なのかを判断しやすくなります。
また、今回は適度な間隔で立つ6本の木を、囲い罠の支柱として利用できました。
新素材の囲い罠で考えられるデメリット
実際に設置してみると、囲い罠ならではの課題も見えてきました。
設置できる場所が限られる
今回は、ちょうどよい間隔で立っている6本の木を利用できました。
しかし、どこにでも都合よく立ち木があるわけではありません。
利用できる木がない場所では、単管パイプなどを地面に埋め込み、支柱を設置する必要があります。
箱罠以上に、現場の地形や立木の配置が重要になると感じています。
捕獲後の止め刺しに猟銃が必要
箱罠と違い、囲い罠の中には広い空間があります。
捕獲されたイノシシが中を走り回る可能性もあるため、安全な止め刺し方法を事前に考えておかなければなりません。
今回の囲い罠では、安全性を確保するため、猟銃による止め刺しを想定しています。
設置できれば終わりではなく、捕獲後まで対応できる人員と安全管理体制が必要です。
ネットを持ち上げて逃げられる可能性がある
金属製の箱罠であれば、一度扉が落ちると、イノシシが逃げ出すことはほとんどありません。
一方、今回の囲い罠は、イノシシが鼻でネットを持ち上げて中へ入る仕組みです。
そのため、偶然にも外側から入ったときと同じ動作に成功すれば、逃げられる可能性があります。
ネットの継ぎ目が弱点になる可能性
新素材のネット自体が高い耐久性を持っていたとしても、金属製ではありません。
ネット同士の継ぎ目や固定部分などに力が集中し、そこから破られる可能性も考えられます。
ネットそのものの強度だけでなく、タイラップやロープを含めた固定方法の検証も必要です。
ネットを閉じると入らなくなる可能性がある
現在は3か所を大きく開けているため、イノシシは比較的入りやすい状態です。
しかし、最終的にはネットを閉じ、鼻で持ち上げて潜らせなければなりません。
この変化を警戒し、突然入らなくなる可能性があります。
今回使用しているものとは異なる囲い罠ですが、過去にはイノシシが警戒して入らなかった事例も報告されています。
入口から普通に入り、後から扉が落ちる箱罠とは違い、「閉じたネットの下を自ら潜らせる」という段階が、この囲い罠の大きなポイントになりそうです。
最大のメリットは圧倒的な軽さ
この囲い罠の最大のメリットは、何といっても軽いことです。
金属製の箱罠は大きくて重いため、組み立てた状態で移動させるには最低でも3人、できれば4人ほど必要です。
運搬には軽トラックも欠かせません。
しかし、今回の囲い罠はネットが中心です。コンパクトにまとめることができ、資材だけなら1人でも運搬できます。
山林の奥や、車両が入りにくい場所への設置を考えると、この違いは非常に大きなメリットです。
一方で、きれいにネットを張り、固定しながら組み立てるには2人以上、できれば3人いた方が作業しやすいと感じました。
今回は3人で作業し、設置には約2時間かかりました。
販売価格は現時点では分かりませんが、金属製の箱罠より安価になる予定とのことです。
軽さと価格の両面で導入しやすくなれば、捕獲現場での選択肢が増える可能性があります。
群れを一度に捕獲できる可能性
くくり罠は、基本的に1基につき1頭を捕獲する罠です。
それに対して囲い罠は、複数のイノシシを同時に捕獲できる可能性があります。
子どものイノシシが先に入り、出られなくなったところへ親が入ることも考えられます。
反対に、親が先に入った後、その姿を追って子どもたちが入る可能性もあります。
イノシシは群れで行動することがあるため、うまく運用できれば、一度に群れを捕獲することも期待できます。
軽くて運びやすく、価格も箱罠より安く、複数頭を捕獲できる——。
実際に成果が出れば、有害鳥獣捕獲の新たな選択肢になるかもしれません。
捕獲して初めて分かることがある
どれだけ仕組みを考え、準備を重ねても、実際にイノシシを捕獲してみなければ分からないことがあります。
本当にネットの下を潜って入るのか。
捕獲後に逃げられないのか。
ネットや継ぎ目はイノシシの力に耐えられるのか。
複数頭を安全に捕獲できるのか。
どのような餌の置き方や馴化方法が効果的なのか。
今回の実証実験では、こうした点を一つずつ確認していきます。
有害鳥獣捕獲の現場に、最初から完璧な正解はありません。
イノシシの反応を観察し、改善しながら、トライ&エラーを繰り返すことが大切です。
今後もこのブログで、イノシシが囲い罠へ近づく様子や、馴化の進み具合、捕獲結果、実際に見えてきた課題などを随時お伝えします。
果たして、この新素材の囲い罠でイノシシを捕獲できるのか。
その後の実証実験も、ぜひご覧ください。
続報を見逃さないよう、お気に入り登録をよろしくお願いします。
※わなによる野生鳥獣の捕獲には、法令に基づく許可や免許、安全管理が必要です。無断での設置や捕獲は行わないでください。
